<2007年8月4日>山紀行・名峰レビュー:「富士山」(その2)

                                 ↓ 名峰レビュー「富士山」(その1)より続く


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★火の山:富士


吉田の火祭り」。毎年8月26日北口本宮富士浅間神社で行われるこの祭りとともに、富士山夏山シーズン(7月1日~8月31日)は終わりを告げます。鬱蒼と茂る杉木立の中にあるこの神社は、富士山大噴火を恐れる人心を静めるため1615年建立、火山鎮護の神を祀っているとのことです。
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江戸時代には「富士講」という富士信仰組織が広まり、白装束・白鉢巻姿でこの神社から頂上まで「懺悔懺悔六根清浄~」と唱和しながら登っていったそうです。この道のりが「吉田登山口」です。


 (2001年5月):北口本宮・富士浅間(せんげん)神社。「御正体山」の帰りに富士吉田の杜を訪問
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.........火山の神を鎮める「吉田の火祭り」で有名↑神社の祭りともにと富士夏山シーズンも終わる。......さすが多くの信仰を集めた由緒ある神社、古式ゆかしい風格ある社殿で威厳・霊気を感じた。......


富士浅間(せんげん)神社は、静岡市や富士宮市にも立派な古式社殿をもった神社がありますが、かねてから「なぜ浅間という名前なんだろう・・?」と漠然に思っていました。
今回よく調べてみると「あさま」という言葉は「火山」を意味する古語なのだそうです。
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な~るほど、富士は古代の人から阿蘇山などと同様、「火の山」として畏怖崇拝されていたのか・・!
「群馬にある浅間山は火山そのもの」という意味だったんですね!またもや勉強になりました・・・。
もしかして「あさま」の語源は「あそやま=阿蘇山」かも・・・。(意外と当たってたりしていて・・・)





★水の恵み、湧水の里

火の山・富士山が持つもう一方の顔は「名水」の生みの親・ルーツの山であることです。
富士山周辺には、名水が湧き出ている素晴らしいスポットがあちらこちらにあります。
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有名な所としては白糸の滝(富士宮市)・忍野八海(忍野村)・柿田川(清水町)・浅間大社湧玉池
(富士宮市)等があげられるでしょう。清水町(鰻が旨い)にお住まいの食山人さんが実に羨ましい!


.....華麗なる「白糸の滝」↓.....これら名水スポットには各2度訪ねた。..... 「忍野八海」↓湧水の里..... 
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........↑富士伏流水が幾筋もの滝となる絶景......素朴な村と富士の景色は実に素晴らしい↑......  
     

これら湧き水は「富士の伏流水」とよばれています。富士山に積もった大量の雪解け水が溶岩地質に浸み込み、数十年~百年の長い間何度も濾過が繰り返された後に、地表に湧き上がってきているのです。その透明度は素晴らしく、エメラルドグリーンの深い水底も覗き見ることができます。


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......←忍野八海から湧き出る井戸底は、神秘的に深くエメラルドグリーンに輝く....


←深く蒼い水に映る茅葺き屋根の家は実に癒される風景.....


富士周辺は製紙工場等の工業地帯も多く存在しますが、豊富な工業用水が得られるからこそ成り立っています。前にも述べましたが、富士山の地下は無数の溶岩トンネルが存在します。
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富士山全体が巨大な水がめとなっており、1日あたり500万トン以上の水が湧き出ているとのこと。
この水はバナジウム等のミネラルが豊富で健康にもよく、飲み続けると長生きできるようですよ! 


     「柿田川湧水」、(透明度と素晴らしい清流光景はなんと国道1号沿線にあるのだ。)c0119160_2285537.jpgc0119160_2294491.jpg

富士山と湧き水や清流風景は実によくマッチしています。忍野八海の素朴な村風景や川の清流・滝の名所には是非とも一度訪れてみてください。マイナスイオンも溢れており、美しい景色と水の音を聞きながら水辺を逍遥すれば心身とも癒されてリフレッシュできることは間違いありません。





★南アルプス・中央アルプスからの富士絶景


前述の通り、静岡在住時は本当によく山に行きました。南アルプスだけでなく、富士周辺を囲む山々(毛無・天子・石割・御正体・三ツ峠等)、静岡安部奥(十枚・真富士・山伏)や駿河近隣の山、沼津アルプス・愛鷹山、身延の山(七面・櫛形)、中央沿線(茅ケ岳・乾徳)など、地の利を生かして毎月のように山に嵌りまくっていたものです。あのよき時代が本当に懐かしく思い出されます。


(2001年7月):南アルプス「上河内岳」から見た早朝の雲海富士(まさに墨汁画の世界だった)
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.....食山人さんと大縦走した南アルプス深南部↑(茶臼・上河内・光岳)は今でも思い出深い。.....


南アルプスや中央アルプスの名峰の間から見える「遠景富士山」は墨絵のような姿でいつも感動させてくれます。食山人さんやY木さんと歩いた南アルプスの中南部(赤石・塩見・聖・上河内・光)や中央アルプスから見た「黎明や雲海に浮かぶ富士の絶景」は今も忘れることができません。
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富士・南アルプス全景が一度に見渡せる「笊ケ岳」という山も本当に素晴らしくお奨めの穴場です。
但しこの山は途中テント泊をしなければならず頂上を極めるには相当長いアプローチが必要です。


(2001年9月):食山人さん・Y木氏と「笊ケ岳」へ挑戦時のパノラマ、テントから見た富士山の夜明け
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........「笊ケ岳」(2,629m)は南アルプスを北部から南部まで全景が目の前で一望できる。「日本200名山」であるが、相当長い時間を歩くことから登るには厳しい山である。(後日レポート予定)............☆


「黎明の富士・ご来光の美しさ」は言葉で表現できない感動。「日の出で刻々と色を変えていく富士シルエットと空の背景色」「雲海に浮かぶ荘厳さ」「墨絵のように霞んでいく朧富士」。

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このようなパノラマ変化を眺望できる幸福感。これを味わうには、早朝時に稜線上や頂上にいることが必要となります。泊りがけの登山も体力的に年齢とともにきつくなってきましたがこのような光景を見たいという気持ちがあるからこそまた山中泊の縦走の旅に行ってしまいます。


(2001年10月):「中央アルプス檜尾避難小屋」から見た「南ア展望」、真ん中に光る山が「富士山」
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.....中央アルプス(木曽駒~空木岳)↑北岳(左)から赤石岳(右)を全て見渡すことができた。......




★富士はやはり見る山・・?

静岡時代、このように夢中になっていた動機・パワーの源泉は一体何だったのでしょう・・?
名山のピーク征服意欲・自然満喫・リフレッシュ・自己挑戦もさることながら、やはり「美しい富士の姿をいろいろな所から見てみたい!」という富士山への憧憬・期待感があったからだと思います。
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山仲間の食山人さんは今も毎月3回以上のペースで登山を続けており、「もはや富士山周辺の山で登ってない所はもうないのでは・・?」と感服するばかりです。 (スゴイ!脱帽!)m(_ _)m
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       (2006年5月):南アルプス鳳凰山(Fツアー)から見た黎明富士
.....「暁光の雲海に浮かぶ富士」↑はまるで墨絵のようでず~っと見とれてしまった。.....
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その距離は近くても遠くても、それぞれにふさわしい背景が日本の随所々には沢山存在します。「富士山は、一定の距離をおいて遠くから俯瞰するのが素晴らしい・・!」
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青い海と松原の砂浜、南アルプスの深い峰々、大都会ビルの眺望レストラン、光り輝く湧水・清流、静謐な湖、いろいろな所から秀麗な形を見せて人々の心を癒してくれる日本一の山。
富士山はやはり見る山だなあ・・」とつくづく思います。





★地球温暖化と富士山

今年の富士山の残雪量は異常に多く、7月1日山開きに除雪が間に合わないと危惧されました。
意外かもしれませんが、これも「地球温暖化」の影響であると思われます。なぜなら暖かい冬ほど冬型西高東低型(寒波の時は乾燥強風)ではなくなり、雨の降りやすい気圧配置になります。その結果、標高が4千mに迫る富士山では雨は必然的に雪になって降雪量が多くなってしまうのです。
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富士山の植物限界は徐々に高度を上げており、遠い未来には山頂までが緑に覆われた山になるとも云われております。しかし恐ろしいことに、そのとき富士の美しい円錐形はもう見ることができないという危機説があるのです。富士山の美しいシルエットも永久凍土によって形造られており、地球温暖化の影響で将来はその形が一挙に崩れ去ってしまうということらしい・・。
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今、地球で永久凍土がどんどん溶け出し、ロシアでマンモスの子どもが掘り出されたり、北極海の氷やヒマラヤ氷河が毎日崩れ落ちています。想像もしたくない「不都合な真実」です。


     〈1999年10月):「黎明富士」と「日の出」の瞬間(南アルプスの「悪沢岳」より望む)
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....↑将来この美しい富士のシルエットが崩壊する日が来るなんて到底想像しがたいことだ。.....





★世界文化遺産への登録


07年2月7日、富士山がユネスコの「世界文化遺産」暫定リストにようやく登録されました。
本来「世界自然遺産」としての登録を目指すべきですが、山でのゴミ放置・し尿垂れ流し・山麓での産業廃棄物不法投棄・俗人的な開発・観光化等がネックとなりその道は阻まれ続けてきました。
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それならば・・と、富士山を取り巻く文化的要素(信仰・史跡・古道・周辺景観・文学芸術等)を世界にアピールすることで「文化遺産」としての正式登録を目指しているところです。
古くは「万葉集」「古今和歌集」等に詠われ、近世「浮世絵」にも描かれてきた文化・芸術的評価
日本三霊山(富士、白山、立山または御嶽)、山岳修験の頂点として崇められてきた霊峰不二
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その圧倒的存在から、多くの民衆から畏敬の念をもって慕われてきました。
これの歴史・文化の重みを鑑みれば、世界の「文化遺産」として認められないわけがありません。


5年以内の正式登録をめざし、静岡・山梨県や周辺自治体は景観の保存管理計画を策定、NPOや民間団体などと連携を図りながら、環境整備の地道な活動を積み重ねています。
(富士五湖周辺の観光業者は死活問題だと反対して、若干足並みが揃っていないようですが・・)
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ユネスコが登録数を抑制し始めていることや、国内の順番待ち(中尊寺・鎌倉・彦根城等が先行して登録)もあるので、正式認定が実現するまでにあと7~10年はかかるのかもしれません。 


     (2007年1月):御坂山塊から望んだ「霊峰不二」(Fツアー07新春登山にて)
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.........冠雪富士の秀麗な姿はまさに「新春富士」に相応しい。手前には西湖が見える。↑..... 
ローリングウエスト山紀行3
←Fツアー07新春登山


10年前、富士山に生まれて初めて登ったのですが、当時は殆どいい印象・思い出がありません。
酸素の薄い空気で高山病になった辛さ、山頂でのゴミの多さ、すごい人混みに本当にガッカリ、「富士山はやはり見る山なんだ・・。一度登ればもういいや・・・。」と思いました。

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しかしその後、登山者の環境に対する意識は大幅に向上し、ゴミは相当減ってきたようです。
また全ての山小屋はバイオトイレに変わり、環境面での整備も着々と進んでいます。
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今まで紹介してきたように富士山周辺にはこんなにも素晴らしい景観・名所・史跡があるのに世界から認められていないのは本当に不思議なことです。文化・自然の両方が認められた「複合遺産」としてユネスコ登録されるのが本来あるべき姿です。一刻も早くその日が実現するといいですね。






★エピローグ


.....冬晴れの日は、東京・横浜でも富士山は鮮明に見える。(横浜みなとみらいの夕暮れ富士).....
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.........↑高層ビルと富士山の夕映えコラボレーションは実に芸術的.....(ネット壁紙から拝借)........


新潟柏崎生まれの小生にとって、冬晴れの太平洋側気候や富士山風景は憧れの的でした。
「いつか日本一の山をじっくりと味わってみたい・・」(雪国育ちの方の共通の思いと察しますが・・)と思っていましたが、縁あって横浜や静岡に勤務する期間が長かったために、「日本一の富士山の魅力」を十分堪能する機会を人生の中で多く得られました。

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静岡時代は「美しい富士の姿を毎日見る」という経験が得られただけでなく、「富士遠景を擁く素晴らしい名所」を頻繁に訪れることができました。富士山の魅力は奥深く、まだその一端にしか触れていないのかもしれません。これから何回も「未体験の富士の感動」に遭遇できると信じています。


リンク:「秀麗富岳十二景」第14回展:優秀作品←(大月郷土資料館さんよりPR依頼を受け紹介)


         (1999年10月):「悪沢岳」より見た「遠く朧げなる富士絶景」
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今でも「富士山は、登るよりは見る山・・。霊峰を遠くから仰ぐ方が素晴らしい。」と思っていますが、
歳を重ねるごとに「もう一度富士山に登りたい!」との心境になる日が来るような気もします。
(その時は「北口本宮富士浅間神社」を出発して吉田登山ルートを苦しみながら登ってみたい!)
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そんな日を迎えるまでは、富士山をさらにいろいろな所から見て楽しみ、心を十分癒してもらうことといたしましょう・・・、憧憬感をじっくりと深めて挑戦への決意を醸成しておくことといたしましょう。

 

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  by rollingwest | 2007-08-03 16:03 | 山紀行・名峰レビュー | Comments(10)

Commented by 神楽坂 at 2007-08-11 17:52 x
秀麗な富士山の姿、堪能致しました。この暑さのなか、黎明、雲海の写真はまさに涼。静岡で美味といえば、三島のウナギ、由比の桜海老のかき揚げ・・。伊豆半島と能登半島の考察、なるほどね。面白く拝読しました。さて、夏休みは柏崎ですか?猛暑のなか、地震の後始末などするようなら、熱中症に気をつけて、頑張ってください!
Commented by rollingwest at 2007-08-11 18:46
作業途中(半分段階)での書き込みありがとうございます。
今日中に残り半分を入れて完成させますので、もう少々お待ちくださいね~!
Commented by 神楽坂 at 2007-08-12 10:34 x
失礼しました。完読しました。長文、よく、ここまでまとめましたね。いやあ、素晴らしい!今後、頭脳が平仮名などとは決して言いません。静岡時代、山に嵌ったのローリンさんの姿が文章から生き生きと伝わってきました。加えて、豊富な登山経験があるからこその深みも感じました。これからの山紀行に期待してます。それから、文章途中でアップしたときには、「続く」とか、書いておいてね。
Commented by rollingwest at 2007-08-12 12:53
完読ありがとうございました。ボキャヒン・脳みそ平仮名で結構ですよ~。(笑) 神楽坂に優しくされるとあとが怖ろしい・・。
次回より作成途中のときは「只今工事中」の看板置いておきます。
Commented by マリリン at 2007-08-12 16:32 x
凛とした美しい立ち姿、やはり富士山はいいですね。
それにしても、お忙しい中、自然との素敵な関係を持たれてお幸せですね。心の襞に感動を沢山刻んで、瞼の奥に沢山の言葉に尽くせぬ思いを染み込ませて、西巻君の命の深みを感じます。
 お蔭様で、家も落ち着きました。
 柏崎で陣頭指揮をとっていらっしゃる東電の副社長様や、科学技術に深い方から、放射能の事をよく説明していただき、心から今は
安心しております。メディアから流れる一部の事実の映像と、全体の真実を伝える報道のあり方を、風評被害ということから、つくづく考えさせられました。また、危険な原子力と、安心して共存する為には、一般市民の教育が何より大切であると感じました。
 なにはともあれ、命あり、家あり、家族ありの幸せな私で有る事に感謝です。
 大いに気分転換できました。美しく、すがすがしい富士山を有り難う。
Commented by rollingwest at 2007-08-12 17:30
原発・環境・安全の問題は、今世界の注目の的ですね。頑張ってください。
Commented by 食山人 at 2007-08-13 10:30 x
写真もすばらしいけれど文章がまたいいですね。文中にもありましたが「あす・うす」は深田久弥も言っているとおりアイヌ語で「火の山」を指すそうで、有珠山、浅間山、阿蘇山なども、そこに由来するそうです。
Commented by ローリングウエスト at 2007-08-13 12:41 x
なるほど、火の山はアイヌ語だったんですね。またも勉強になりました!
Commented by tomiete3 at 2013-02-17 10:03
上の方のコメントにありますように添えられた書き込みに感動しています。
Commented by rollingwest at 2013-02-17 12:52
tomiete3様、 恐れ入ります。阿蘇も浅間山も富士山も皆、火山繋がりで雄大な裾野を見せておりますね。

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