<2008年7月26~27日>「笠ヶ岳」より「槍・穂高連峰」を望む(その2) 

↓(その1)より続く   (⇒今回、新規に完成した記事です。)


★笠ケ岳・再興、槍ケ岳・開山の「播隆上人」


日本で最も有名な山の一つ「槍ヶ岳」・・「あの天を突く尖鋭峰に初登攀したのは誰か?」と問えば大抵の人は「ウォルター・ウェストン」(日本アルプスの命名者)と答えるかもしれません。正解は「播隆上人」という江戸時代後期の浄土宗僧侶であり1828年頂上に登って祠を建立しています。


  ....(左)日本アルプスを探検したウエストンのレリーフ(上高地) (右)「播隆上人像」(JR松本駅前)....c0119160_11324784.jpg
c0119160_11385272.jpg

有名な山岳小説家「新田次郎」の著書に「槍ヶ岳開山」がありますが、「播隆上人」の物語が描かれています。今から30年程前、この小説を読みましたが名作「孤高の人」に匹敵する面白さです。
c0119160_11372193.jpg
笠ヶ岳」は飛騨・美濃に多く残される木彫りの円空仏で有名な「円空上人」が開山したのですが、「播隆上人」がこの麓に住んでいた頃は久しく荒廃状態だったそうです。この山を再興させるため登山道完成・一里毎の石仏設置・頂上への阿弥陀仏安置など「播隆」は多くの功績を残しました。


    ....(右)「槍ヶ岳」の登山道脇にある「播隆窟」、53日間も篭って修行した岩窟....c0119160_932725.jpg
c0119160_934591.jpg
「播隆」が初めて「笠ヶ岳頂上」に立った時、天空を裂くが如く遠方にそそり立つ三角鋭鋒が目に入り、彼の心は大きく揺さぶられます。その鋭峰こそが「槍ケ岳」。この憧憬の山に何度も挑戦して、53日間も岩窟に篭って修行、遂に頂上の祠を設置して開山本願を成就することができたのです。


   ....(左)「槍ヶ岳・黎明」北鎌尾根からの日の出   (右)穂高連峰上空に輝く朝雲....c0119160_1129916.jpg




c0119160_1130241.jpg


小説では、「播隆」が笠ヶ岳頂上で「如来の御来迎」という奇跡に遭遇する場面が描かれています。これは「ブロッケン」が現れたもので、太陽光が背後からさしこみ影側にある雲・霧がスクリーンとなり遠方にある自分の影が虹色光輪の中に映る自然現象。(普段滅多に見ることはできません)

    .....ブロッケン現象(インターネットで公開されているものをお借りしました。) ....
c0119160_991825.jpg
c0119160_9141191.jpg


「ブロッケン現象」の遭遇は過去2~3回経験ありますが、やはり不思議な気持ちになったもの・・。
単独で頂上へ阿弥陀仏を担ぎ上げた「播隆」は、この体験をして「笠ヶ岳」や「槍ヶ岳」がますます神々しい特別な山に見えたことでしょう。まさに本小説におけるクライマックスシーンでありました。


                      
★笠ヶ岳を後にしてパノラマ下山


雨予報の不安も吹っ飛び、2日目は絶好のパノラマウォークとなりました。遠方俯瞰からの笠ヶ岳・山容もやっと目にすることができ、改めて名山であることを実感!まさに名は体を表わすなあ・・。

   ....(左)「笠ヶ岳」の雄姿!なだらかな美しい稜線はまさに「編み笠」の姿にそっくり....
c0119160_11321271.jpg



c0119160_11322979.jpg

今日の縦走は笠ケ岳・北稜線を北上し、抜戸岳・弓折岳を経て鏡平に降りていくコース。絶景を楽しみながら高度を徐々に下げていく歩きで、急登に苦しんだ前日に比べると何と天国の様な日か!
c0119160_11465674.gif

    ....翌日は迫力ある稜線が目の前に広がる!「秩父岩」を通過して「弓折岳」へ向かう。....
c0119160_11315612.jpg


秩父岩を降りる雪渓は急激に谷底へ落ち込んでいくようなスリル感があり、実におもしろかった!
奇岩に囲まれた谷間は大きな雪渓が残り、あちらこちらにお花畑も点在して天国のような場所。

         ....「秩父平」に降りていく急雪渓。遠方には尖鋭な奇岩が迫る。....c0119160_11325359.jpgc0119160_20282798.jpg
c0119160_20311799.jpg












c0119160_1202139.jpg

気持ちいい稜線を歩き切るとやがて「弓折岳」に到着。双六岳へ向かう北稜線と、鏡平へ降りていく分岐ポイントです。ここで一服休憩、稜線パノラマを名残惜しく眺望すると遥かに鷲羽岳・三俣蓮華岳・黒部五郎岳など、裏銀座・雲ノ平方面の山々が望まれます。そして真下には鏡池が光る・・。


         ....「弓折岳」に到着して一服休憩、さ~てあとは下るだけだ~(笑)....
c0119160_20324255.jpgc0119160_1224517.jpg

      ....(左)「鏡平」に到着、    (右)2年前にここで見た「鏡池」に映る「槍・穂高」の絶景....c0119160_20344180.jpgc0119160_203622.jpg

今日はガスっており「槍・穂高」の池の雄姿を見られませんでしたが、2年前に撮った上記写真で雰囲気を味わって下さい。「鏡池に映る穂高」・・、あまりの美しさに暫し呆然と佇んだ過日の光景↑
c0119160_1262967.jpg

鏡平~弓折尾根を下る「小池新道」は花崗岩が平らに敷かれ、実に歩き易い道。テンポよく降りていくと「秩父沢」という開けた渓谷に出ます。雪渓の爽快風が山から吹き抜けて来て実に涼しい!
プシュッ!と缶を開けビールを喉に流し込む爽快感!今までの苦労はこの極楽瞬間を味わうためだ。

  ....(左)「秩父沢」で昼食、ひんやりした風が実に気持ちいい(右)最後はダラダラと長~い林道....c0119160_20383026.jpg
















c0119160_1215752.jpg


新穂高温泉に至る「左俣林道」は飽きるほど長~い道のり。「わさび平小屋」を過ぎたあたりから雲行きが怪しくなり、雷鳴も聞こえてついに大雨が降り出してきました。全国各地で集中豪雨被害が発生したこの週末、山縦走ではパノラマに恵まれ、雨が下山後とは実にラッキーなことでした。

...(左)「わさび平小屋」脇で、大木に咲く「ツル紫陽花」に遭遇 (右)長い山道もいよいよ終点へ...c0119160_203956100.jpgc0119160_20403297.jpg


ついに終点・新穂高温泉に到着。奥飛騨・栃尾温泉へバスで移動し、公共露天風呂で汗を流しました。この時は雷鳴が轟くシャワー雨中での露天!なかなか味わえない楽しい経験だったなあ・・
c0119160_1219821.jpg


     ....奥飛騨の栃尾温泉には、寸志200円で入れる露天風呂「荒神の湯」が。(実に広い)....
c0119160_12195312.jpgc0119160_12201640.jpg

日本百名山「笠ケ岳」・・・、アプローチはきつかったけれど実に歩き甲斐があるいい山でした。目前に槍穂高連峰を望む絶好の展望台。自身の姿も美しく、周辺光景も爽やかで花の種類も豊富!
次回、北アルプスの山から「笠」の姿を見つけた時、今迄とは違う感慨をもって眺めることでしょう。
c0119160_1141223.jpg

                                                    おわり

<今回登山ルートの概念図>  

    ①赤い印が笠新道登山口で、抜戸岳への稜線が急登ルートです。
    ②稜線から頂上を極めて笠ケ岳山荘へ宿泊、翌朝ご来光を見て弓折岳までの縦走
    ③下山は、鏡平山荘~ワサビ平小屋~新穂高温泉のルートでした。
c0119160_1732831.gif

                       ↑(詳細を見るにはクリックして拡大図でご覧下さい)

  by rollingwest | 2008-07-30 06:28 | Comments(14)

Commented by matsu at 2008-08-08 15:26 x
 山好きで武田信玄ファンとしては、新田次郎は神様のような存在で、作品はほとんど読んでいます。「槍ケ岳開山」も好きな作品の1つで、この作品を読んでから、槍ケ岳登山の際は、いつも幡隆上人のことを思い浮かべています。
 新田次郎の代表作の1つで、明治末期に当時としては初めて剣岳に登った日本陸軍の測量隊を描いた「剣岳 点の記」(浅野忠信主演)が、「八甲田山」の撮影監督、木村大作の演出によって映画化され、このほど完成したようです。公開は、来年の夏頃のようですが、今から、楽しみです。
Commented by rollingwest at 2008-08-10 14:00
なるほど・・、マツさんの登山ルーツは「山岳宗教」への興味からでしたから、この小説は外せないところですね。
「ブロッケン:如来の来迎と」はいきませんでしたが、槍ヶ岳「御来光」の光景を味わえて、少しは播隆上人の心境には近づけたのかもしれません。

「剣岳・点の記」の映画公開は小生も実に楽しみにしているところです。
Commented by 架け橋 at 2008-08-14 07:49 x
ようやく読みました。ツルアジサイがよかったです。
こういう山行記をキーワードで検索してたどりついたとき、地名が分からないとき、地図が掲載されてあるといいなあと感じております。
Commented by rollingwest at 2008-08-14 20:09
架け橋さん、実にいいアドバイスですなあ・・。
早速、笠ケ岳周辺の概念図と今回のコースポイントを表して添付してみました。今後はできるだけ地図・概念図をつけるようにいたします。
Commented by 3式機龍 at 2008-08-14 23:30 x
いいですね、秩父平の左下の写真。
偶然・・・ていうことはないですよね。意図して斜めにしたわけですか?
他の写真がノーマルである中で、ここだけふと「失墜感」があります。
目が行きます。
Commented by rollingwest at 2008-08-15 06:03
さすが、機龍殿!意図して斜めに撮影して急傾斜感を出しました。
背後のギザギザ岩に、怪獣を出現させたいでしょ!(笑)
さすが、つねに円谷の目やアングルで景色を眺めていますね。

Commented by 葛飾のオヤジ at 2008-08-17 05:51 x
こんなにも高い山の尾根を歩くと
気持ちいいんだろうなぁ。
だって右の山も、左の山も同時一緒に見る事が出来ちゃうんでしょ?
Commented by ローリングウエスト at 2008-08-17 05:53 x
前の山も、後の山も一緒に見れますよ(笑)

でもこの気持ちのいい稜線に来るまでが実にシンどかったんですよ
Commented by 寂恋法師 at 2008-08-17 05:54 x
ローリンさんたいへんご無沙汰しております。書き込みの筆(?キー)不精をお詫びします。小生昨今俗世との縁を断ち、仙人になるべく修行を重ねております。そうはいってもいまだ妻子とペットを養わねばならない家住期の身、なかなか思うように修行が進みません。先週金曜日からは還俗の10連休です。今年はもっぱらグラスを傾けソファに寝そべりながら、オリンピックのテレビ観戦でのんびりとした夏休みを過ごしています。ところでローリンさんの山岳紀行文と写真集はいつも楽しく拝見しています。相変わらずの健脚ぶりと薀蓄に富んだ深みのある表現にただただ感心するばかりです。また次のGDMOB会で一緒に登れる日を楽しみにしています。
Commented by ローリングウエスト at 2008-08-17 05:55 x
寂恋法師様、実に久しぶりの登場ですね!
貴殿の書き込みが小生ブログの第1号だったのに、その後パッタリと音沙汰がなくなりやや心配しておりました。でもこうやって日頃から読んでいただいていたとは嬉しいですね!

先日、空ボッカリョースケさん上京の折に、懐かしいメンバーで花福で楽しく集まって盛り上がりました。次回のGDM-OB会はまた2~3年後に企画しますのでまた参加してください。

Commented by 空ボッカのリョースケ at 2008-08-27 18:24 x
先日は、大変、楽しく過ごさせていただきました。あんなに涙が出るほど笑ったのは久しぶりです。(地下道でオジサン2人が涙して笑っている図は確かにフシギだ!)
山手線では逆行?しかけていたが何とか帰り着くことが出来ました。
寂恋法師殿も次回、GDM山行では山中で即身成仏しないように身体を鍛えておいてくれ。
私も、いつも美しい山の写真を楽しみにしています。それでは次のローリンさんの山行記をまってるよ!
Commented by rollingwest at 2008-08-27 20:02
リョースケ殿、先日は楽しかったなあ。
涙流しながら笑えるのは、やはりGDM面子での飲み会が一番!
君も含めて、TARAや亀吉さんなどゴールデンメンツが揃ってるからね。(笑)
でも貴殿の上京で久しぶりにO塚さんやS盛らと会えて本当によかった。
今回、北アルプス黒部源流を5日間歩いてきました。私が初めて北アルプスを体験したのは、貴殿や亀吉さん・Y沢さんらと有峰・折立から雲ノ平~槍ヶ岳。今回はその懐かしいコース(薬師岳・雲ノ平)を31年ぶりに歩いてきました。
3日間雨風にたたられたけれど、晴れた2日間は薬師岳と雲ノ平が素晴らしい日に恵まれて実にラッキーでした。
Commented by そら♪ at 2011-02-11 18:19 x
私には、北アルプスが、思い出が多いお山です。

長い闘病生活のあと、不自由になった身体のリハビリのために始めた山遊び・・
最初に出向いたのは、残雪期の爺ヶ岳で落雷と霰の降る中、悲惨な山行でした。
そして次に出向いた燕岳で、初めて槍を観て、憧れました。
そのあと槍から南岳を周遊し、キレットを観て憧れました。
そのあと南岳から前穂を周遊して、ジャンを観て憧れました。
そのあと西穂から奥穂を縦走して、次の目標は100名山?(笑)
本州と四国の100名山は2度3度と歩き、九州も3座は踏みましたが・・・
でも、流石に北海道は羊蹄山だけで、他は休みが取れず、無理(涙)

目標を生き甲斐に頑張り歩いてきた山々♪
生き甲斐を持たせてくれた山々に、
感謝しています。・:*:・(*´ー`*人)。・:*:・アリガト
Commented by rollingwest at 2011-02-12 07:20
そら様、北アルプスデビューでしたか!小生は2回目の登山が、有峰~雲の平~裏銀座~槍ヶ岳でした!
お互い、これから長~く名峰を語り合いましょう。

<< <2008年7月26~27日>... <2008年7月26~27日>... >>