<2008年11月22日>武蔵野「はけの道」(国分寺崖線・湧水エリア)を歩く
★はじめに
今年は綺麗な紅葉をまだ十分に味わっていない・・!秋の山行では絶好の快晴に恵まれましたが針葉樹が多い山でその願いも成就せず、ついに11月下旬3連休を迎えてしまいました。連休初日は雲一つない大快晴!パブロフの犬と化してしまい、紅葉を求め出かけられずにはいられません。
武蔵野の風景は「雑木林」と「丘陵斜面の湧水」が有名・・、このエリアの特徴は「はけ」と呼ばれる段丘崖(正式名:国分寺崖線)が多摩川とほぼ平行するように走っていることです。崖下から出る湧水は「野川」として住宅街の中をうららと流れ、実にほっとする景色。この辺も何度か来ましたが、自分の足で再度じっくり歩いて「武蔵野・多摩シリーズ」として紹介しましょう。紅葉も十分満喫した~。
★「武蔵国分寺史跡」から「お鷹の道」
JR中央線と武蔵野線がアクセスする西国分寺駅に降り立ち「旧鎌倉街道」を南下していくと「国分尼寺跡」に到着、昔の柱跡が沢山残されていました。奈良時代に聖武天皇が「国分寺建立の詔」(741)を発令し日本全国に国分寺がつくられましたが、その女性バージョン(尼さん)のお寺です。
....(左)武蔵国分尼寺跡(お寺の支柱跡) (右)青空に映えて、たわわに実る柿....
これを通過すると、次は男性バージョン「武蔵国分寺」を目指します。(武蔵野線・府中街道を横断)
ここも伽藍配置の跡(分倍河原合戦で焼失)だけで建物は残っていません。日本各地に国分寺の名前は多く残っていますが、市名としてストレートに使用しているのはここ東京の国分寺市だけだ。
伽藍跡を尻目に進めば、国分寺の名をもつ名刹が現れてきます。江戸時代に復興された「景勝院国分寺」。ここは楼門・薬師堂・万葉植物園などがあり、緑に恵まれたいい雰囲気のお寺です。
....(左)武蔵国分寺である「景勝院」の楼門 (右)国分寺薬師堂の鐘楼 ....
....国分薬師堂の入口「仁王門」....
そこからは「はけ風景」を象徴するような雰囲気のいい路が続いていました。欅木・竹林の中を往く石敷きの路の傍らには澄んだ水が流れ、鯉が泳いでいる。点在する大きな農家の門や蔵も見えてゆったりした気分・・。ここは「お鷹の道」、江戸時代に将軍が鷹狩りで通ったことに由来するらしい。
.... 清流沿いに「お鷹の道」を行く。途中には「真姿の池」がある。....
後で地図を確認すると「お鷹の路」北側(国分寺崖の上)は、JR国分寺駅前に繋がるメインロードで各商業施設が立ち並ぶ通常生活道路でした。平行に走る2つの道は雰囲気が完全に違うね~
★「殿ケ谷戸庭園」
「お鷹の道」から車が往来する一般道に出て坂を上がっていくとJR国分寺駅前に出ました。マルイの大商業施設・マンション等が密集する繁華街ですが、その目の前に「はけ」地形を生かした都立庭園があります。「殿ケ谷戸庭園」といい昭和初めには三菱財閥・岩崎家が所有していたとのこと。
....国分寺駅前にある「殿ケ谷戸公園」、自然地形を生かした湧き水公園....
...庭園内にある風情ある路 ↓萩のトンネル 竹の小径↑ ....
おお~!ここの紅葉は見事だ。自然地形と湧き水や池がうまく組み合わされた回遊式の渓谷園となっている。「萩のトンネル」も秋ならではの珍しい季節散策路、「竹の小径」と共に風情があるね~
JR中央線メイン駅の目の前にこんな豊かな自然・湧き水があること自体にビックリ!羨ましい・・。
...燃え立つ紅葉が見事、庭園内は小さなミニ渓谷....
...園内を回遊する散策路、「はけ」の清流と鮮やかな紅葉がマッチしている。....
庭を回遊すると立派な茶室「紅葉亭」に登りつめます。ここは庭全体を見渡せる位置にある東屋で渓流・湧水の紅葉が絶景じゃ~!「いいねえ・・あ~やっと本願成就!」 プシュッ・・ビールが旨い!
......(左)「紅葉亭」の中から見る庭園風景 (右)紅葉亭の池、水面にモミジ葉と金魚....
★「国分寺崖線」と「野川」の散策路
国分寺崖線は古代多摩川の浸食によってできたもので、西は武蔵村山市から東は大田区まで延びる段丘をいいます。地元では「はけ」と呼んでいますが、単に崖や斜面を指しているのではなく、崖下から清らかな地下水が湧く所という意味があるそうです。地層構造は下記HPをご覧下さい。
..... (出典)三鷹市教育センターHP:郷土学資料:(左)「はけの道」断面図 (右)平面図 ....
(クリックすると拡大で断・平面図が見れます。)
戦後を代表するベストセラーとなった「武蔵野夫人」(大岡昇平著)において、本地域が舞台となり「はけの道」が詳しく紹介されたことが契機となって、この名前が一般的に定着したとのことです。
この散策路は、延々と続く崖とその斜面に建つ独特な住宅街風景で、見慣れぬ土地景観に興味が大いにそそられます。便利な中央線沿いで身近に湧水の自然風景があるのでやはり高級住宅街の雰囲気がある・・。でも崖面に密集するように建つ同じような形をした建売住宅も多いけどね。
......湧き水を水源とする「野川」沿いには、瀟洒で落ち着いた雰囲気の住宅街....
湧水清流は「野川」という名で武蔵野・住宅街を静かに流れている。もう少し洒落た名前(国分寺川とか)でもつければいいのに・・。青空の下、ビールほろ酔い・いい気持ちで逍遥するオヤジでした。
.....野川清流に泳ぐ三羽のカモ、「カモ~ン・・、あっ行っちゃった・・」 ヒュ~(寒)oyajy....
......今度は白鷺が飛んできた!「カモ~ン・・、おっ今度は来たぞ・・」....
★「湧水の池」と「はけの道」
野川沿いに東に歩いていくと「貫井(ぬくい)神社」に到着。ここには大きな湧水の「ひょうたん池」があります。昏々と湧き出す水は「黄金の如く豊富な水の井戸」という意味で「小金井」の語源となっています。水の透明度と真っ青な空、真っ赤な紅葉に鮮やかな鯉、もう色と光が乱れ交っている!
.....「貫井神社」、小金井・語源池は本当に美しかった!「カモ~ン、コイよ来い」situkoi ヒュ~(凍)....
住宅街の風情ある神社に別れを告げ、さらに歩いていくと大きな自動車道(新小金井街道)を横断します。ここで国分寺市は終わり・・。ここから先が小金井市となり、「はけの道」はさらに続くのだ。
.....(左)「倉浪泉園」(「武蔵野夫人」小説の舞台)の湧水池 (右)「金蔵院」の鮮烈な赤モミジ....
......落ち着いた雰囲気の「小金井神社」、菅原道真を祭神としている。....
......「はけの道」の途中にはキウイ果樹園があった。実にたわわ~!....
風情ある住宅街の路を進むと、周囲は武蔵野特有の雑木林風景になってきました。今回コースの最終スポットは「武蔵野公園」です。ここで今が盛りの紅葉を大~いに楽しみたいと思います。
★「武蔵野公園」
「野川」に沿って雑木林を残しながら、広場も配置された都立公園。街路樹に植える苗木を育てる苗圃が多くあるようです。また昔、当地は東京で有数の米どころだったようで水田碑もありました。
.....この公園は小金井や武蔵野の市民憩いの広場、雑木林が多くあって実に広い!....
.....(左)洋凧を揚げて走り、楽しくはしゃぐ坊や (右)マウンテンバイクの練習フィールドもあるぞ!....
「秋の夕日は釣瓶落とし」、15時も過ぎると太陽は早くも夕暮れ時に向かって傾き始めてきた・・。
しかし今日は雲一つない晴天日・・。遮る物のない西日は照葉樹を間接照明の如く、紺碧空にクッキリと浮き立たせてきました。公園全体が独特なムード・黄昏色に徐々に染め上げられていきます。
..... 「武蔵野公園」の紅葉並木、鮮やかな赤と黄色のコントラスト競演....
.....「武蔵野公園」の中を流れる「野川」の堰堤を散歩する人たち...
.....(左)落葉を集めている人 (右)眩い黄昏の光に映える紅葉公園...
この公園は40種・約1000本もの桜があって、1ヶ月以上に渡ってお花見ができる名所だとのこと。
春は野川堰堤沿いの満開桜が壮観のようですが、今は夕日に映えた紅葉並木が実にスゴイ!
.....「武蔵野公園」の中を流れる「野川」沿いに連なる紅葉!夕日照葉が幻想的...
.....武蔵野公園に別れを告げ、「むじな坂」(右)を登り、繁華街を通り小金井駅へ向かう。...
朝、西国分寺駅から歩き始めたのが9時過ぎ、もう15時を過ぎている。満足・充実感を身に感じて、帰路の「むじな坂」を登ります。坂の上はコンビニ・ファミレスが現れすぐに通常生活道路風景
ここからはJR小金井駅をめざします。JR3つ駅の区間を踏破か・・、今日は5時間位は歩いたな。
.....今回辿ったコースの地図:西国分寺駅⇒国分寺駅⇒小金井駅の散策路を東進...
(クリックすると拡大で地図が見られます。)
いや~、今日は十分に、湧き水・清流と由緒ある史跡・公園・鮮やかな紅葉を楽しむことができた!
住宅街・繁華街と、豊かな湧水清流と自然。この近接ギャップが実に楽しく、住む人は羨ましいね。
この楽しい武蔵野コースは気に入った・・!これから季節に応じて何回も訪れてみようっと!
おわり
*「はけ」段丘崖は、武蔵村山・立川からJR中央線の武蔵野の主要街を経て都内の等々力渓谷・田園調布辺りまで連なっています。今後も幾つかのコースを歩いて記事シリーズ化の予定です。
# by rollingwest | 2008-11-28 10:58 | 近郊歩きのミニ旅 | Comments(37)