<2021年2月>【北区探訪】①:渋沢栄一に所縁深い「王子・飛鳥山」編




日本経済の礎を築いた明治期の実業家「渋沢栄一」の活躍を描くNHK大河ドラマ「青天を衝け」が2月14日からいよいよ始まりました。前作の「麒麟がくる」終了がコロナ禍影響で2月7日にずれ込んだため変則のスタートでしたが、視聴率は20%を記録して好調発進のようです。
.....(左) 大河ドラマ「青天を衝け」の主人公「渋沢栄一」 (右)2年後は1万円札の顔.....
30年前に渋沢の伝記小説・「雄気堂々」上下巻(城山三郎・著)を読んで感銘し、「渋沢栄一の偉業はNHK大河に取り上げられるべきだ!何故これ程迄に無名なのか?」と不思議に思い義憤に近いものを暫し感じていました。しかし新1万円札の顔として注目されてメジャーになり、今回やっと大河ドラマの主人公として彼の生涯が1年間綴られていくことを嬉しく思います。
....日本のあらゆる国内産業を創設した企業家・渋沢栄一と北区の歴史を探訪!.....
渋沢栄一の偉業や史跡探訪はわがブログで過去2回レポートしました。1回目は9年前に大学サークル仲間と都電荒川線(大塚~早稲田)ウォーキングで訪問した「飛鳥山公園」(JR王子駅隣)です。「渋沢栄一史料館」(晩香廬・青淵文庫)を見学したことが懐かしき思い出だ!
....2012年に大学サークル仲間と都電荒川線ウォークで王子・飛鳥山も訪問周遊.....
.....(左) 渋沢傘寿祝で寄贈された「青淵文庫」 (右)喜寿祝で建てられた「晩香廬.」.... 



2回目の記事は、7年前に渋沢栄一の出身地(埼玉県深谷市)の風景を見てみたいと思い立ち、富岡製糸場(世界遺産)と合わせて見学周遊したレポートでした。渋沢栄一が生まれ育った深谷・血洗島の生家、渋沢記念館、市内の煉瓦建築・工場史跡などをレポートしています。
.....2014年に渋沢が生まれ育った埼玉深谷市を巡る。血洗島の生家は豪農屋敷....
.....(上)深谷市の「渋沢栄一記念館」 (下)国内産業の礎を築いた実業家偉業が展示.....
渋沢生家や記念館だけでなく、東京駅に匹敵する威厳の深谷駅舎や煉瓦建築見所も是非お勧め!大河番組が今後進むにつれて渋沢の実像や彼の成した偉業の素晴らしさが認識され、今後深谷市や富岡製糸場、東京北区への見学客が増え混雑していくのは間違いありません。
.....(上)渋沢が創設した日本初の煉瓦製造工場 (下)名門「深谷商業」の優美な校舎.....
コロナ禍で観光客が空いている今こそが自由自在に見て回れるチャンスかもしれません!今回レポは久しぶりに都内探訪記事、「渋沢栄一」が住んだ北区(王子・飛鳥山・西ケ原)の見所や日本近代産業の発展史に焦点を当てながら2~3回に渡りレポートしていきたいと思います。
.....(上)深谷駅舎の建築は東京駅を彷彿 (下)「誠之堂」&「清風亭」煉瓦建築の美.....
★王子駅から「北区・飛鳥山博物館」で北区の歴史・渋沢栄一偉業を再び学ぶ
大河ドラマで取り上げられ「渋沢栄一史料館」もリニューアルされたことから、9年ぶりに入館してみようと王子駅から「飛鳥山公園」に向かいました。今日は一点の雲もない快晴日だ!
.....王子駅前から「飛鳥山公園」へ!「渋沢翁のテーマパーク」の新しい看板が設置.....
「渋沢栄一史料館」に入ろうとすると改装工事中で開所は2月20日、事前予約制に変更され何と春まで全て埋まっているとのこと!エ~!?9年前は当日入館ができたのに・・!皆様に館内を紹介できないのは残念ですが「都電荒川線旅」の詳細レポから各種施設をご覧下さい。
.....「渋沢栄一史料館」は本記事公開直前(2/20)オープン、事前予約制なので要注意....
小生が訪問した9日後に上記のように「晴天を衝け・大河ドラマ館」としてリニューアル工事が完了して華々しく再開オープンされたようです。 飛鳥山公園には3つの博物館があり、「渋沢栄一史料館」の他に「北区飛鳥山博物館」「紙の博物館」があるのでコチラには入館したことがなかったので、代わりにこの2館を見学してみることにしました。
当館は古代から近現代に至るまでの北区の歴史をはじめ、自然や文化を幅広く紹介しており、当時の人々の暮らしぶりも知ることができます。エントランスには縄文時代の丸木舟・土器・貝塚・人骨等が展示、さらに弥生・古墳時代・律令社会の暮らしがビジュアル再現されています。
.....(左)縄文時代の丸木舟・土器人骨等 (右)巨大な貝塚標本が紫色に光輝く!....
.....(左) 北区の古代象徴、豊島郡衙の正倉 (右)弥生・古墳時代の土器・刀剣....
厚さ日本一の貝塚の剥ぎ取り標本(積層厚4.5m)は圧巻!縄文・弥生時代から始まり近代まで北区の歴史や自然が学習できます。バリアフリー化された館内は、情報機器・映像ソフトが駆使されており、各時代の特徴がわかりやすく楽しく鑑賞できるよう工夫されていました。
.....武蔵国の領主・豊島氏は豊島区に名を残す。江戸城を築城した太田道灌も登場....
館内を進むと明治時代・産業勃興期の展示へと導かれ、ここで日本経済の礎を築いた実業家「渋沢栄一」が登場します!渋沢は数々の銀行・企業・教育施設を創設、王子製紙(設立当時は抄紙会社)の工場を眼下に見守ることができる北区・飛鳥山に邸宅を構えました。
.....渋沢栄一登場!王子に近代産業の数々の企業を興し、自らも飛鳥山に住んだ....
王子に設立された製紙工場、王子電気鉄道(現在の都電荒川線)、国立印刷局(大蔵省王子紙幣司)など、北区には日本産業発展の礎が築かれた場所だったのかと再認識しました。
.....(左)地元名産の野菜 (右)荒川の水辺風景・魚・鳥などの生態系が再現....
北区の北部から都内に流れ込んでいる荒川、その水中風景と河川敷の動植物生態系が観察できる大型模型ジオラマも必見です!そして飛鳥山といえば名立たる桜の名所として江戸時代から有名でした。江戸庶民の花見場所として賑わった飛鳥山の歴史を覗いてみましょう!
.....江戸時代の飛鳥山風景、花見で賑わった桜の名所は浮世絵にも描かれている....
当地を桜の名所に仕立て上げたのは8代将軍徳川吉宗でした。「享保の改革」(1716年~)で江戸庶民の不満を和らげるため、禁止されていた「酒宴」「仮装」は桜の名所地では容認されたのです。江戸っ子達にとってお花見は大イベントとなり様々な趣向を凝らして楽しみました。
.....桜の下でお花見宴会、丸桶・重箱に盛られた豪華な寿司・弁当も再現されている....
コロナ自粛で今年も花見は日本全国自粛になるのは確実ですが、RWは一度飛鳥山の見事な満開桜を見たいと思っており今年の春こそ願い実現のため本公園を再訪するつもりです。
.....江戸時代から有名な飛鳥山の桜、今年の春こそこの満開風景を体験するぞ!....
★日本初の製紙産業(王子製紙)の発祥地・北区王子で「紙の博物館」を見学
3つの博物館の最後は「紙の博物館」を紹介します。北区にはJR王子駅の他にも十条駅がありますが、王子製紙や旧・十条製紙などの会社名からも分かるように、王子は日本の洋紙発祥の地です。明治時代初期、渋沢が日本最初の洋紙会社を当地に設立創業させたことに由来します。
.....渋沢栄一は王子で洋紙産業を創立した発祥地、「紙の博物館」で歴史を勉強....
入場するとまずエントランスに聖徳太子(和紙づくりの祖)の巨大絵が飾られています。古くから使われてきた和紙の三大原料(コウゾ、ミツマタ、ガンピ)の展示、和紙の製造工程(皮剥ぎ、煮込み・繊維質抽出、紙漉き・脱水・天日乾燥)が江戸時代の絵で解説されていました。
.....(上)和紙づくりの祖は聖徳太子 (下)「紙漉重宝記」は和紙製造工程を記す....
江戸時代の紙作りは、1798年に石見国(島根県)の国東治兵衛が記した製紙の技術書「紙漉重宝記」に詳しく記録されています。その挿絵21点を和紙で作られた紙人形で個々の工程を表現した「紙漉重宝記人形」、紙づくり作業が繊細な和紙で優しくされており実に素晴らしい!
....和紙を作る工程作業が和紙で表現される「紙漉重宝記人形」は独特の味わい....
....(左)紙製瓢箪 (下)東大寺お水取りの和紙衣装 (右)明治大正期の紙問屋ポスター...
次は近代日本の発展を支えた「洋紙の歴史」に目を向けていきましょう。渋沢栄一が1873年王子に設立した「抄紙会社」、この会社が初代王子製紙の前身であり、輸入に頼っていた洋紙の国産化を成し遂げるきっかけとなりました。紙を抄く機械・抄紙機の誕生と、原料が木材になったことで、大量生産が可能になり国内製紙産業が大いに発展していったのです。
.....国内製紙産業勃興期の機械(抄紙機・連続蒸解釜・蒸煮釜など)が展示....
....「和紙と文化」「紙と産業」「紙の教室」、我々の生活に欠かせない紙をお勉強.....
「北区飛鳥山博物館」「紙の博物館」は大変勉強になりました!今まで王子・飛鳥山は渋沢が自宅を構えた地のイメージだけでしたが、王子製紙のルーツ・近代日本産業発祥地だったことを再認識!今回「渋沢栄一史料館」は予約制で見られなかったのは残念でしたが、一度館内鑑賞しているしNHK大河が終わればまた自由に入館できるので次回のお楽しみとします。
★「飛鳥山公園」から「王子駅」周辺を巡り、渋沢栄一の足蹠を発見!
博物館見学を終えて久しぶりに飛鳥山公園を散策してみよう。広場中央には数々の遊具施設が置かれており沢山の子供達が歓声を上げている!少子化時代とは思えない活気だネ~!
.....「飛鳥山公園」は子供達が楽しく遊ぶ!SLや都電車両も置かれ鉄道ファンにも人気地....
飛鳥山は上野・芝・浅草・深川とともに日本最初の公園に指定され、東京一低い山「飛鳥山」の山頂(港区愛宕山よりも低いと確認)です。次回は桜満開時期に再訪することにしましょう!
.....公園内には小さな滝や岩が並んだ小川などもあり子供が探検気分を満喫.....
王子駅前には都電荒川線(現在は東京さくらトラムと呼ぶらしいが・・)の電車がゆっくりと走り抜けて行きます。昔は黄色や緑一色の車両だったけど今は実にカラフルになったもんだ!都電のルーツも渋沢栄一設立「王子電気鉄道」なのだからここにも足跡が残っているのか・・。
.....王子電気鉄道は今や「東京さくらトラム」、「都電荒川線」の名称の方が馴染み深い.....








王子駅周辺には紙幣や証券類・郵便切手を発行している国立印刷局があります。そのルーツは大蔵省紙幣司、当初の業務は紙幣の発行、交換、国立銀行の認可・育成等紙幣政策全般でした。コチラも渋沢栄一が創設、印刷局の隣には「お札と切手の博物館」があります。
....(上)王子駅近くにある国立印刷局周辺を散策 (下)「お札と切手の博物館」が隣接.....








「旧・醸造試験所跡地公園」は王子駅から坂を上った左手にあり、公園内には明治期を代表する建築家・妻木頼黄が設計した赤レンガ建物(国指定重要文化財)が静かに佇んでいます。
# by rollingwest | 2021-02-21 11:25 | 都会の風景 | Comments(154)